【はじめに】
例年この時期(4月~6月頃)になると、自然界では雛の巣立ちの時期となります。無事に巣立ちをする雛、何らかの障害で巣立ちが出来ない雛と、運命の分かれ道に立っている訳であり ます。自然の摂理ではありますが、人の行為が障害となることは避けねばなりません。 野生鳥獣と接することはなるだけ控え、見守ることが重要と思いますが、必要なら保護することも必要になるかもしれません。そのような時の対処法として過去に雀の雛を育てた経験を記します。
保護する前の認識
【野生鳥獣】
野生の中で生きている傷病鳥獣を助けたい気持ちは皆おなじでありますが、どこまで人間の手を差しのべてよいのか、判断に苦しむ場面です。野生の鳥獣なので人間の手で育てれば、自然に帰るのが難しくなります。
【巣から落ちた雛】
巣から落ちた雛は、巣に戻すことが一番の方法です。
落ちていた付近に巣がないか探してみてください、耳を澄まし親鳥の声が聞こえないか確認して下さい。
もしも巣があったらそっと巣に戻すのが一番です。
【巣に戻せない】
天敵(ヘビやカラス等)から襲われ巣が壊れたり、親が逃げていない場合や落下地点から雛が動いたりし た場合には巣に返す事が出来なくなりますので、人間の手で育てることとなります。
【保護】
雛を保護センターで確保したら、以下の点を確認しています。
怪我の有無の確認(巣から落下時の骨折や打撲、外傷の有無)
雛が怪我や打撲の場合生存率が極端に落ちます。(体が出来ていないため、抵抗力なし)
【保温】
雛の場合、最も気を使うのは保温です。特に複数羽でなく単数羽の場合保温力は極端に落ちます。電気あんか等(携帯用カイロでも可能)の保温器具を使い適温に保ちます。
ヒヨコの飼育温度を参考に記載します。⇒参考にして下さい
0~3日:33℃ 4~7日:30℃ 8~14日:27℃ 15~21日:24℃ 22日~:12~25℃
【巣箱】
保温を目的に巣箱を作ります。私はダンボールで作成し、中に保温用布などをいれています。特に保温器 具に直接雛のからだが触らないような工夫が必要です。
【餌付け】
緊急的にはゆで卵の黄身等を与えますが、長期的になる場合には市販のすり餌が無難です。
分量は通常スプーン一杯くらいを水で練って下さい。(耳たぶか少し緩め)
【餌の与え方】
1)雛の収容時
・餌を自ら取れない雛には、人の手が必要となります。ゆで卵の黄身やすり餌をコヒースプーンや割箸等で作った器具を使い与えます。器具に乗せた餌をくちばしの傍へ持っていくと、大きな口を開けますので直接口に入れ与えます。開けないときには口の横の黄いろい部分を刺激すれば口を開けます。(1日4回ほど与えていました。満腹になれば口を開けません)
・自分で餌が取れるようになればほぐしてトレーなどにバラバラと敷くようにします。分量は1時間程度で食べきる量です。
2)成長したとき 自然界の餌を調査し与えるようにします。スズメの場合雑食ですが基本的な餌は、昆虫や木の実が主食です。
昆虫(バッタ等)は野原で捕獲し与えます。(木の実は小鳥の餌を代用している)
【水の与え方】
水は与えすぎに注意が必要です。与え方はスポイド等で1滴~2滴与えます。与えすぎると下痢をし体力を 消耗しますので、与えすぎには注意が必要です。成長していくと自ら給水するようになります。
自ら給水するようになれば、給水器などを使い給水します。水が飲めないと、餌が食べられません。
※ 給水器:市販品もあるが制作する場合には、空缶の横に小さな穴を開け、それを皿のようなものに伏せれば簡単に作れます。
【放鳥】
巣立ちの可能な状態になれば、自然界へ返す事が肝要です。人の手で育った野生鳥獣の巣立ちはかなり厄介かもしれませんが、時間をかけ徐々に馴らしていけば可能です。
雀の場合、しばらくは家から離れませんが、時間がたてば仲間のところへ帰っていきます。
※ 巣立ちと親離れ
野生の小鳥は、ある時期がきたら巣の中から自然の中へ飛び立ちます。これは自立したわけではなく、親もとから離れただけの状態で「巣立ち」と言います。親は巣立ちした雛を自然の中での危険や餌等について実地訓練している段階であり、この段階を踏んだ雛でないと、自然の中では生きていけません。
この実地訓練が終わった雛を「親離れ」といい、若葉マークのついた自立した幼鳥となります。 巣立ちから親離れの時期は、小鳥で10日~1か月程度、大型の鳥で最長1年程かかる場合もあります。
人間の目から見れば、ヒナが落ちている可哀想なので保護しようとしますが、雛からみれば自立の邪魔 をしているだけであります。
落ちた雛と遭遇する事が多いので、そういった知識大変ありがたいです(><)
熊本には野生の生き物を大切にする施設があり大変心強く思います。野鳥が大好きなので、これからも陰ながら応援しています。